誤解だらけの難病 若年性認知症1
posted on 2017.01.29
家族だから語れること〔若年性アルツハイマー病の夫とともに〕
アルツハイマー病は死に至る難病である
アルツハイマー病。
病名が独り歩きをしている病気のひとつであろう。
「ボケ」「徘徊」その他 周辺のイメージが定着して 恐るべき難病であることが見過ごされている感がある。
私たちも当事者となるまでおおきな誤解をしていた。
アルツハイマー病=物忘れ
では 決してない。「記憶能力」は病が奪い去っていく「脳機能」のうちのひとつにすぎない。
進行性の脳の病であり ひとつずつ機能を奪い 最後には死に至らしめるものであることをしっかりと認識するべきだと考えるひとは少ないが、一番本質にせまることだと思う。
私たちが経験してきたことと これから経験することをありのままに記録することで できるだけ多くのひとに伝えたいと願っている。
まさかの病名 若年性アルツハイマー病
診断のきっかけとなった事件は
「ネクタイが結べない」
だった。
物忘れではないことに注目してほしい。
指先の運動をコントロールする・・・脳機能の不具合だった。
病名から受けるイメージとのあまりのギャップにたいへん混乱した。
若年性アルツハイマー病の場合 症状の現れ方に大きな個人差があるということである。
診断につながらず 大きな悲劇になるケースもあることだろうと想像できる。
他人事ではない、決して。。。
私たちが経験した症状 その1
指が泳ぐ・・・
朝 出勤の身支度をしていた夫が困り果てていた。
ネクタイが結べない。
首元でネクタイをもった指先が 目的なくよろよろと動くばかりで「持ち替える」「交差する」などの動作ができず まさに「泳いで」いる状態だった。
明らかにおかしい。
「動く」しかし「動作」にならない。
脳の異常「脳卒中」や「脳梗塞」をうたがって病院へ。
その日のうちに CTとMRIの検査をうけたが異常はみられず シンチグラフィー検査の予約をとってかえることになった。
けっきょく何もわからないまま「泳ぐ指」をなだめながら生活して 診断をまつしかなかった。
この状態がいわゆる「失行」だったと知ったのは それから2年もたってのことだった。
実態は知らされないまま
実態は知らされない というより知らせようがなかったのだなと 経験が重なるとわかってきたのだが、それほど若年性アルツハイマー病初期の症状は個人差が大きい。
また 目に見えないほどのゆるやかな進行の病に 過剰におびえて暮らす必要もないだろうとの配慮のため「大丈夫ですよ」「いきいきと暮らしましょう」と強調される。
そのため できれば病気と認めたくないという無意識の作用から
そもそも これは病気といえるのか?
と 無視してはならない現実から目をそむけているような なんとなく居心地の悪い思いをしていた。
ただ 真実を綴るのみ
闘病生活は長期にわたり さまざまなステージがある。
その間 生活では心理的な変化 出来事も多いのだが あえて症状に関わる事柄をピックアップして記録していきたい。
私たちの記録はひとつの事例にすぎないが、若年性アルツハイマー病は身体(脳)の機能を奪われて死に至る病であることを描き出す一番の方法であると思う。