若年性アルツハイマー病 / 尻尾をかんだ蛇4
posted on 2017.03.10
若年性アルツハイマー病の夫とともに
初診から3年と2か月 今日のできごと
- 楽譜の拡大コピー 一覧表から倍率を確認して成功
- コピーした楽譜をポケットファイルに収納 うまくいかず断念
- ソックスをかかとを上にして履く 指摘で気づく
- ガスファンヒーターをなぎ倒す/この冬2回目
(来年はエアコンにするべき?) - 電気シェーバーで眉毛を剃ってしまう
(オシャレになったのでまあいいか)
若干のやりなおし時間があれば問題なく生活可能
個人練習 そして 伴奏合わせ
反乱する指をなだめながらではあるが
たくさんの人が知っている曲、みんなで一緒に歌っていただける曲のプログラムを用意しての ボランティアコンサートに向けての練習は毎日の生活の張りとなっていた
そこで また 不思議体験
曲が決まり まずは個人練習
のち
コンサートが近づいて全体の構成打ち合わせと伴奏合わせとなるのだが
個人練習で完全に演奏できている曲が
伴奏合わせになると途端にガタガタになることがおこりはじめた
拍が乱れる
小節がとぶなどの「ミス」として起こりえない現象で演奏が崩れているのだが アルツハイマー病は“尻尾をかんだ蛇”
演奏の不具合を自覚できない
「やりにくい。伴奏と呼吸が合ってない!工夫してくれ!」
「テンポを正確に刻まなければ吹けないじゃないか!!」
と イライラがつのるばかりとなる
さらに そこへ道路工事の爆音が聞こえてきたところ・・・
完璧にさらってあった指使いがバラバラに崩壊した
素人ながら「考 察」
空間に存在する「音」に注目してみると
レッスン室内での個人練習→→伴奏合わせ→→外からの雑音 と 耳に入る音が増えるごとに意識が制御不能になっていくのがわかる
普段 私たちが作業を続けて行っているとき
無意識のうちに
害かいから押し寄せる「情報」を注目すべきもの、無視してもよいもの にふるいわけて処理しつつ ほどほどの集中力を保っているということを示していないだろうか
生活の中に散らばる雑多な情報をふるい分ける
普段 意識することのない脳機能だが もしも この機能が欠落したら・・・
世界は混沌とした恐ろしいものになり 絶えず緊張していることにならないだろうか?
たぶん まわりから見える以上に さらには 本人が意識する以上に 何気ない刺激に集中と緊張を強いられていることになる
日常の対策として
コミュニケーションや動作において
ゆっくり
というだけでなく 含まれる情報を極力少なく できれば一つにしぼって集中できるようにする
環境的に雑音が多い時などは あらかじめ これは「雑音である」と納得するステップを踏むなどの工夫で混乱は大いに緩和される体験をした
音楽 楽器演奏のおかげで 自分たちなりに考察・納得ができ 生活の工夫ができるのは実にありがたいことである
自覚が持ちにくいなりにも 録音などを検証して主人にも納得がいったらしく イライラするよりも「邪魔なものをどけてくれ」と表現できるようになり一気にQOLがアップした
もう一点
ボランティア演奏などで「楽しさ」を強調して にぎやかにすること 「ゆったり」をもとめて ひたすらゆっくりとえんそうすること 両方とも実は本質ではなかったのだな と大いに反省した
アクティヴさを引き出したいときには ただ一点 アクティヴに集中できるようにする
リラックスを求めるときには リラックスのみをターゲットにする
曲ごとに想いをはっきりと分析して提供してこその音楽だと思い演奏をするように心がけるようになった
続・続・尻尾をかんだ蛇にいどむ
脳機能の低下によって引き起こされる症状を自覚するのも脳機能である
アルツハイマー病にかかった脳は自らが破壊されていく危機感を感じ続けることができない
ダメージがダメージの存在を意識の中から消していく
へびが自らの尻尾をくわえ 自らをのみこんでいくように
オーボエを練習すること オーボエの基礎訓練を怠らないことが 生きがいの主人であり オーボエを通じて発見する運動機能の不具合に挑むことが 日常生活の動作の維持につながっているのはたいへんありがたいことである
好きなことを続ける 楽しめることに没頭することこそ 最大の機能維持のプログラムと言えるだろう
しかしながら
基礎訓練が 月ごとに 週ごとに 困難になっていき ひとつひとつの動作に要するエネルギーはふくれあがっていく その事実に本人は気づかない
“尻尾をかんだ蛇”は もし認知機能が正常なら感じるはずの「絶望」をのみこんでくれているのだ
脳機能の欠落によってわが身がじりじりと制御不能に追い込まれる恐怖を感じないでいられるのもこの「蛇」のおかげであれば 蛇をどう飼いならすかが 生活を豊かにすることにつながると思われる
ボランティアコンサートより
演奏の記録 友人の理解と協力で・・・
現在進行形のチャレンジ
アルツハイマー病=物忘れ
とはちょっとちがった風景が見えませんでしょうか?
病が奪い去っていく「脳機能」は人としての存在を混乱させます
当然 本人にも家族にも戸惑いや葛藤がありますが、極力心理的な部分はとばしています。
主人の心のなかは主人にしかわからないことですから
アルツハイマー病=物忘れ
ではありません。
「ボケてまわりに迷惑をかけるどうしようもない人」でもないのです。
失われていく脳の機能に翻弄されているのです。
どれだけ本当の姿がえがきだせるかチャレンジです
早期診断 早期自覚は機能維持と以後の人生設計に大切なことです
人としてよりよく生きる
だれもが持っている権利として意識したい
アルツハイマー病に限ったことではなく誰もが意識しておきたいことだとおもいませんか?
見過ごしがちな変化の中に病気の兆候があるかもしれません
主人の場合の診断のきっかけとなった事件は「ネクタイが結べない」でした
物忘れではないことに注目してください
指先の運動をコントロールする・・・脳機能の不具合でした
若年性アルツハイマー病の場合 症状の現れ方に大きな個人差があるそうです
なかなか診断につながらず 気がついたときには大きな悲劇
そんなことにならないために 参考にしていただければさいわいです
ブログ
ひきこもごも 日常の様子はこちらです。
やはり 不安や孤独と戦っています。いいね や シェア コメントで応援していただけたらありがたくおもいます。
みんなで若年性アルツハイマーな生活を理解しようの会
できるだけたくさんの方にご参加いただきたいと思っています
よろしくおねがいします